白髭の仙人♪
税務会計の仕事をしていた頃、多くの顧問先でいろんな社長さん達とご一緒する機会を得た。
皆さん年上で人生経験豊富で、それはそれは多くの事を学ばせていただいたものだ。
仕事を辞めた後も、生きる上で大きな影響を与え続けてくださっている。二十歳そこそこでお聞きしたときに
は、自分の中に深く入ってこなかった言葉も、力があったものは月日の流れと共に、思い起こされ、
血肉となって自分の中に宿っている事に気づく。
今でも強烈に記憶に残っているのは、貸しビル業のオーナー。第二次世界大戦で南の島の激戦地で闘った
帰還兵。いつも白作務衣に白い長髪長髭で、風のように爽やかな人だったので、わたくしの中で「白髭の仙
人」というニックネームがついた。
「戦地で、仲間たちが死んでいく中自分は生き残った。シベリアなどの極寒の地と比べれば、木の実などで飢
えを凌ぐ事が出来た。木陰に入れば灼熱地獄からは解放された。朝日が昇り日が沈み夜の帳が下りる頃、
その日一日生き延びられた事に感謝した。満天の星空の美しさと言ったらなかった。いつ散るかともしれぬ命
のもとで観るからこその美しさと言うものは確かにあるんやな。帰国後、人様から頼まれて購入したタダ同然
の土地、人助けと思って引き受けた土地がみるみる一等地に属し、今は、そこにビルを建て、人様に貸し収入
を得ることが出来ている。いまでも、帰還した頃と暮らしぶりを変える事はしない。質素に、太陽に感謝して、歓
びを持って生きている。貴女も毎日やって見るとよい。朝日を抱きしめる様に仰ぎ、目覚め一日を始められる
ことに感謝する。夕日に手を合わせ『今日も一日ありがとう!』と言い、安らか眠りにつくのですよ。」
本当に不思議だが、この後そのようにしていて、わたくしの人生は歓びでいっぱいになった。
自然界で生じることに注意を払うようになり、自然の法則に忠実に生きると物事は上手く運ぶものだと知った。
だから山に入るし、緑の中に住んでいる。人工的な物は出来るだけ生活の中から排除するようになった。
正しい方向を探る勘が鈍るからだ。
「白髭の仙人」の事は今でもしょっちゅう思い出す。ご自分はおしんこに麦飯を食べていらっしゃったで
あろうに、わたくしの様な青二才にいつも特上握りのお昼をごちそうしてくださった。笑顔はとても優しいけれ
ど、その奥に潜む眼光の鋭さは今でも脳裏に焼き付いている。
by kaori40712007
| 2011-07-11 18:49
| 仕事
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